政府が20日、官房機密費(内閣官房報償費)の支出状況公表に踏み切ったのは、機密費の透明化を叫んでいた野党時代の民主党と、及び腰が目立つ政権交代後の対応との落差に厳しい視線が注がれていることを考慮したためとみられる。ただ、今回の公表は情報公開請求にかかる手続きを政府が先取りしたにすぎず、政治的パフォーマンスの印象はぬぐえない。
「政権交代が起きるときって、こういうものじゃないか」。鳩山由紀夫首相は20日夜、記者団にこう語り、機密費の透明性向上に取り組む姿勢をアピールした。
民主党は野党時代、機密費の透明性を確保するための「機密費改革法案」を国会に提出するなど、この問題には積極的だった。
ところが、平野博文官房長官は政権発足直後の9月17日の記者会見で、機密費について問われると「そんなものあるんですか」と対応を一変。今月5日の会見では、河村建夫前官房長官から引き継ぎを受けたことは認めたものの、使途公開は拒否し、首相も「すべてをオープンにすべき筋合いのものとは必ずしも思っていない」と非公開を容認する方針を打ち出していた。こうした中、政権交代直後に1億2000万円を引き出したことも明らかになり、自民党は批判を強めていた。
首相官邸サイドとしては、マスコミなどの「追及」から逃げてばかりいては世論の離反を招きかねないと判断したようだ。もっとも、公表したのは支出日と金額という「情報公開請求があれば出る情報」(平野長官)だけで、具体的な使途や支出先は伏せられたままだ。
「公表対象は自民党政権時代のものばかり。民主党政権にとって、隠すものは何もない」。政府関係者がこう指摘するように、公表に当たっては冷静な計算も働いたとみられる。民主党内には「(衆院選直後の)麻生政権のどさくさ紛れの支出は国民の理解を得られない。これで相打ちだ」(中堅)と、批判の矛先が自民党に向かうことへの期待も出ている。
(時事)
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